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畷 太郎

「出ずるを制す」ではなく、必要の充足こそ行政の使命

更新日:2020年4月20日

 東市長は、令和2年の市政運営方針で、当初予算で「入るを量りて、出ずるを制す」を実現したと述べました。

 しかし、財政学では、教育サービスや公共施設整備を目的に「出ずるを量り」、そのために住民の同意を得ることで「入るを制す」が、財政の原則と教えています。

 政府は、儲けるために「入るを量りて」税を取り、教育サービスや公共施設整備をコストと考えて「出ずるを制する」ことで利益を出すために存在するわけではないのです。「入るを量りて、出ずるを制す」は教育サービスや公共施設整備をコストと考えて小さな政府を唱える新自由主義者の主張です。

1.財政は「出ずるを量りて、入るを制する」のが原則

 政府の仕事は、提供するサービスが社会に必要だということに住民の同意を得、これを実施するために税率を定め住民から収入を得ることです。

 だから、「出ずるを量り」、つまり住民が何を必要としているかを調査し知恵を働かせ、これに必要な財源をえるために住民の同意を得て税率を定め、「入るを制する」ことが行政に求められるのです。

 よって、財政は、「出ずるを量りて、入るを制する」のが原則です。

 これに対して、民間企業は、顧客の需要を満たしてリターンを増やし、コストを削減することで、儲けることが目的です。

 売り上げを増やして「入るを量」ることに知恵をはたらかせ、コストを削減して「出ずるを制する」ことで、もうけを増やすのです。

 そこで、「入るを量りて、出ずるを制する」が原則になります。

 行政の原則がこの民間の原則と同じであるとの主張に従えば、よい行政とは、税を徴収することに知恵を働かせ、できるだけ行政サービスをしない政府だということになります。

 しかし、税は、行政が知恵を働かせて徴収するものではなく、住民の同意を得て徴収するものです。

 また、教育、社会福祉、防災対策といったサービスは、無駄使いは困るけれど、コストとしてできるだけ減せば良いものではありません。

 そうではなく、このサービスが必要だから市民は政府を設置するし、税の徴収にも同意するのです。


2.利用率の低さは、必要性のなさを意味しない

 民間のように、「入るを量りて、出ずるを制する」のであれば、利用率が低いことは、効率の悪さを意味し「出ずるを制する」ためにサービスを切り捨てる基準となります。

 しかし、「出ずるを量りて、入るを制す」という財政の原則では、学校が小規模であることや、公共施設の利用率が低いことは、その必要(万人への幸福追求権の保障や地域社会の絆のため)がないことを意味しません。

 教育にとって小規模が良いことならその必要性を明らかにすることで、幸福追求権や市民の絆を支えるうえで必要な公共施設なら、住民に利用してもらえる施設に改善することに知恵を絞ることで、税を払うことに納得してもらえるようにする、つまり「入るを制する」ための検討材料となるべきものです。

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