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条例についての私たちの議会での意見陳述

1.校区住民投票条例制定請求

 

(1)市長の意見と私たちの見解

 

市長:計画は住民の意見を聞き、街づくりの観点から総合的検討を行った

反論:適正配置審議会会長が「住民の意見は取り上げない」と審議指揮、教育委員長が「意見交換会は、賛否を含む住民の意見を聞く場ではない」と教育委員会議で述べている。市民の意見は無視された。義務教育は恩恵なのか?

市長:計画は、保護者の要請もあり策定した。計画は、教育環境を整える(最低十二学級維持)という理念に立脚

反論:学校が遠くなっても単学級をなくすため現校区を解消すべきか否かは基本的には地域住民が選択すること。「遠くても、大規模校に通わせたいので、地域の小中学校をなくしてよい」と誰も望んでいない。

市長:校区で住民投票を行うのは、公平・公正に問題

反論:学校は校区の専用施設で、他校区住民に利用権はない。学校廃止を一方的に押し付けないでと願うのはどの地域も同じ。

市長:コミュニティに支障を生じない

反論:1校当たり人口が11500人と府下最大になる。学校の存在感が薄い地域では、子育て世代が孤立する。

市長:教育環境整備計画関連の予算は、議会での審理を経ている

反論:長寿命化を検討しない予算提案と議決であり、尊重する前提を欠く

 

(2)代表者三名の意見陳述要旨(平成28年4月27日)

 

(辻村淳子)

保護者から寄せられた率直な意見を紹介します。市は、本当に小規模校がダメなのか、適正規模とは何なのか。こども達にとって、より良いのはどのような規模なのか。そういった話し合いもせず、切磋琢磨できない。クラス替えができない。との理由で、学校を統廃合しようとしています。

クラス替えがあっても、大規模で、先生の目が行き届かない。いじめがあっても気付いてさえももらえないような学校には、行かせたくありません。なにが、子どもたちにより良い環境なのか、をまず十分に議論すべきです。

八回の意見交換会の参加延べ人数は、二三〇人とわずかであったと聞いていますが、それでもこの計画案に対する多くの不安から、たくさんの質問が出されました。しかし、私も含めて、多くの質問や意見に対して、納得のいく回答をいただいていません。その結果が、今回の署名につながっていると思います。

市は、アンケートを根拠に小規模校の生徒保護者は統廃合を望んでいると言いますが、このアンケートは、複数学級が良いかどうかを聞き、統廃合については問うておらず、これでは納得できません。

また、学校は地域の核としての役割があります。三年ほど前に、南中学校でコンサートが開催され、たくさんの地域の方が参加され、すばらしいコンサートでした。四條畷中学校で、同じコンサートが開催されたとして、南中校区の地域の方々が参加するでしょうか。家から、近くの場所で開催されるからこそ、足をはこび参加できます。

 

(早田有為子)

住民の視点、親の視点、子供の視点で市へ求めている事について述べさせていただきます。

安全に通わす為に、できるだけ学校が近い方が良いというのは、ほとんどの親が持つ意見です。市は統廃合は学校間の公平・公正の為にとの意見をなされていますが、それは学校規模についてであって、学校の距離が遠くなる子供は、それだけ帰宅が遅くなるため、帰宅までの危険性が高くなり、近い人と比べて勉強できる時間がかなり少なくなり、むしろ不公平さが増すように思います。

子供にとっての公平は、一人一人にきちんと向き合ってもらえる体制があることです。少数学級が問題であるという意見もあるようですが、それが問題である根拠や統合した方が良いという根拠も明白に示されていないため、我々が理解をするに至りません。

平成二六年度の自殺者のうち五三八人が未成年者であり、自殺の動機として最も高いのが「学校問題」で半数近くを占めるというデータ、他の学校との統廃合による母校の廃校に悩み、小学5年生の男の子が特急電車に飛び込み自殺した事件(平成二五年二月)をご存知ですか。子供にとって学校環境は生死にかかわるほど、比重の大きい事柄です。そんな、重要な事柄を大人の都合だけで決定することが、子供にとってどれだけの不安定さを生むかを考えてみてください。

コミュニケーションは、衣食住と同等の生きるために、人権を守るために必要なものです。対話を拒否すると言う事は、個々の人権を軽視しているのです。我々市民も少子化の実態を受け、学校統廃合を頭から悪いと言っているわけではありません。住民に計画を周知し、合意を得る必要があるというのが、この条例の必要意義です。

もしそちらの主張が正しい、本当に市民の為になるものとして今回の計画を立てられたのではあれば、なんの躊躇もなく堂々と住民の前で説明をし、納得をしてもらえば良いのではないでしょうか?

このような条例制定を作りたいという声があがる事そのものが、市が我々と対話をしていないという、最たる証です。そして、対話が確実になされるよう議会に条例制定を求める理由です。

 

(横溝幸徳)

私は、この条例の法的意味について見解を述べます。

市は、学校統廃合について、市民の意見を聞いたと言っております。しかし、私たちは、統廃合に対する反対や疑問の意見を無視されたことに怒り、この条例を提案しています。

教育委員長は「意見交換会は賛成反対の意見を聞く場ではない」とし、適正配置審議会会長は、審議会は「計画の是非を議論する場ではない、市民の意見は取り上げない」として、市に寄せられた多くの反対意見や疑問意見を顧みませんでした。

学校はその校区の子どもの権利を実現するために設置されているのです。それゆえ、学校を廃止するときは、反対者を含め、住民に納得のいく理由を説明しなければなりません。行政手続法が、その法的地位を変更される者の意見を聞き、これを尊重することを求めているのは、この趣旨です。

校区住民投票条例は今回の手続きの違法を是正し、また、二度と住民の権利が無視されないようにするものです。

次に、校区住民投票で学校存続の是非を決めるのは、公平公正という見地から問題があるとする意見について、私の見解を述べます。

どの地域の住民も、自分の地域の学校を勝手になくさないで欲しい、子どもや保護者の権利の平等を守って欲しいと思っています。だから、校区の住民が投票するというこの条例への賛同が廃校される地域を超えて広がったのです。

公平上問題があるという意見は、この市民の願いを尊重するのは不公平だというものです。しかし、教育行政における公平とは、学校規模の平等ではなく、子どもの教育を受ける権利の平等のはずです。

そして、市長が代表する市民の多数意思によって、地域住民の意向が無視されないようにする任務を担うために、教育委員会の市長からの権限独立が保障されているのです。校区住民投票条例は、教育委員会がこの任務を全うすることを、保障するものでもあります。

次に、市長は、コミュニティが維持できないとの指摘は当たらないと述べています。そうでしょうか。現在、市の小学校は七校で、一小学校区の人口は八千二百人と府内市町村の標準ですが五校になれば一小学校区一万一千五百人と極端に多くなり府内最大となります。

校区が大きくなれば学校の存在感が薄い地域が出てきます。これは、子育て世代の孤立化につながり、高齢者だけになる地域を生み出します。それでもコミュニティを維持できるという見解は、地域が世代を承継するものでなくても良いという地域切り捨ての見解です。

ところで、子ども基本条例では子育てに対する住民の責任を定めています。その責任を担うことを地域住民に求めるのなら、学校の存廃も地域の判断にゆだねるべきです。校区住民投票条例は、世代を引き継げる街にしようという校区住民の主体性を大切にするものです。

次に、市長が計画は予算審議を経てきたとしている点について、意見を述べます。

学校の更新については、少子化に対して、学校数を減らすのでなく、長寿命化を図るという選択もできるのです。

議会は、長寿命化という選択肢があることを知っても、これを検討していない審議を尊重せよと市民に求めるのでしょうか。

当会では、今日、選挙管理委員会に長寿命化の検討を義務付ける条例制定請求署名を提出致しました。

議会に於かれましては、長寿命化改修についてご審議の上で、校区住民投票の採決をお願い致したく、継続審査の措置を取られるようお願い申し上げます。

2.公共建築物の長寿命化の検討を義務付ける条例制定請求

 

(1)市長の意見と私たちの見解

 

市長:国のインフラ長寿命化基本計画の主意は、画一的延命でなく、集約、集合、転用を含む施設整備

反論:生活水準を維持しつつ建築費の削減と、更新事業の集中防止を図るため、インフラの更新サイクルを諸外国並みに長くするのが主意。

文科省が、長寿命化改修の自治体負担を二六・七%に抑えたのは、集約・集合が住民意思に反して強制されないようにする趣旨

地域の合意がない学校廃止の強行や、生徒移籍が無駄な二重投資を引き起こすような統廃合は、長寿命化の主意と相入れない。

市長:教育環境整備計画は、緊急課題(小規模校解消、同一校進学。老朽対策)解決が目的

反論:住民は「子どもの多い小学校に通えるよう地域の学校をなくして」「同じ中学校に通えるよう地域の中学校をなくして」と要望していない。

市長:新小整備は、南中校舎を使えない、発表交流スペースの確保、土砂災害警戒区域で安全度を高める必要があるために行う

反論:統廃合しなければ新小建設は不要。発表・交流スペースは、長寿命化改修を行えば、余裕スペースを活用して全校で確保できる。

市長:これまで同様、長寿命化も一方法として検討

反論:市は、長寿命化の検討をしてこなかった。

長寿命化は、余裕を充実に生かす、人と地域の歴史の蓄積を大切にする、廃棄物を減らす、といった理念の具体化。

まちづくり長期計画は、子どもの人口が減れば学校を廃止し、売却可能資産に替えるもの。→ この計画を見直さない長寿命化検討は欺瞞。

 

(2)請求代表者三名の意見陳述要旨(6月14日)

 

(早田有為子)

1.地方自治における、市民参加の大切さ

(1)近年、行政があらゆる公共サービスを担い、市民はサービスを受け取るという一方通行が見直され、市民が本当に必要とする町づくりが求められています。

地域に貢献していこうと、定年後や空いている時間を利用し、ボランティアを行っている市民も少なくありません。その中で、我々の税金が納得いく使われ方をしているのかも注目されています。

納得を得る上で大切なことは、市民が望むサービスや街づくりを行う為に、きちんと市民の声を聞くことです。

今回、多くの市民が、学校統廃合計画が独断的且つ無謀な計画だとして、署名という形で、怒りを向けています。市はこのことをどう考えているのでしょうか?

国が、インフラの老朽化が集中する中「賢く使うこと」への重点化を課題とし、平成二五年一一月に「インフラ長寿命化基本計画」を策定して、トータルコストの縮減を目指しているにも関わらず、長寿命化を検討しないとは、いったいどういうことでしょうか?

(2)表向きは、市も市民の意見を反映する姿勢を示しています。

市では、平成二七年一月に市の現状や将来のまちづくりに対する意識やニーズを把握するために中学生アンケートと市民意識調査の結果を公表していますね。

中学生アンケートの二〇五〇年に叶えたい夢については、「南中が残ってほしい」「小さな子からお年寄りまでみんなが楽しく気持ちよく過ごせるまちがいいと思う」などが、あなたが市長だったらしてみたい事については、「大きな公園やボール遊びができる場所をつくる」「市民の意見をできるだけ取り入れて、より良いまちをつくりたい」という大変すばらしい回答が寄せられていました。

無作為に抽出した一五歳以上の三000人の居住校区別で見た住みやすさの調査では、「住みよい」との回答は東小校区の方が一番多かった。身の回りの十年の変化で、良くなったと答えたのは緑地、環境、ごみなどの生活環境が四五・六%、逆に悪くなったとの答えで最も多いものは幼稚園や小中学校の教育環境で一二・六%です。子育てがしやすいかの質問では、「子育てしやすい」がわずか六%、「どちらかといえば子育てしやすい」も三九・五%で、全体として半数以上の方が子育てをしやすいとは思っていないという結果になっています。 

(3)果たしてこうした調査は生かされているのでしょうか?

まちづくり長期計画の意見交換会について、「賛否を含む意見を聞く場ではない」とした教育委員長の発言は、住民をないがしろにし、独断的に計画を進めることの表明に他なりません。

また、先月行われた議会では、校区住民投票条例は否決され、市民の意見を取り入れる必要がないとされました。過半数の議員がこの問題に目を背けている事実は非常に遺憾でなりません。

2.環境問題を学び実践する場と、地域の歴史を作る資源としての学校

近年CSR(企業の社会的責任)として企業も地域社会に貢献し、地球環境に配慮することが必須になってきています。

市も、建物の整備などの公共事業では大量の資源を使い、大量のゴミも出すことになる為、環境に配慮した計画が求められます。そこで、長寿命化改修を行えば、環境への取り組みとなり、費用もぐんと安くなるのは子どもでもわかることです。

また、四條畷市は、歴史のある町ということをアピールしているのに、小中学校をあっさりと取り壊してしまえる事が、不思議でなりません。歴史はそこに暮らす人々の想いや、伝承によって、その重みが増していきます。その思い出の詰まった学校も地域の歴史を作る大切な資源であることを認識していただきたいです。

3.地域の防災と学校との関係

土砂災害特別警戒区域に指定されているという理由で東小を廃校にしても、その区域に生活を続ける住民の事はどのように考えていますか?学校廃校よりも、防災拠点として校舎の強化や設備の充実を図ったり、区域全体の安全の為に水抜きの場所を作るなど表土が滑らない対策をして、地域を安全にすることを優先すべきではないでしょうか。

4.子どもへの責任とは

最後に、皆の共有財産をどう活かし、役立てられるかを考え実行する、そういう大人の取り組み方を見て、子どもたちは人や物を大切にするということを学ぶのです。それをできない大人に、子どもたちの教育を任せたくはありません。私たちは、子どもたちのためにも、地域を次世代に承継してゆく責任ある大人となるべきなのです。

 

(辻村淳子)

1.もったいない!

「使えるものは長く大切に使おう」これは、長い間、日本人が大切にしてきた気持ではないでしょうか。とりわけ、財政面で余裕があるわけではないのですから、無駄な出費を控えるように考えるのが当然です。

2.統廃合を望んでいるのは誰

市長は先の意見書で、三つの緊急課題解消のため統廃合が必要と書かれていましたが、そもそも、それは誰が望んでいることなのでしょうか。

(1)「子どもの数が少ないから、よその学校とくっつけてほしい。遠くなっても構わないから」との意見が多く寄せられていたというのなら、校区住民投票条例にこれほど多くの方が協力して下さったでしょうか。私は、学校の適正な規模については、住民の声の他に、先生方の意見も聞くべきだと考えています。小中学校の間に、何をどれだけ学び経験しておかなければならないか、そのために必要な人員はどれくらいなのか、一番わかっていらっしゃると思うからです。

現場の声も保護者の声も聞かず、今の規模は小さすぎると決めつける根拠はどこにあるのでしょうか。

(2)同一小学校からの進学先の相違の解消という点については、学校を選択できることを認める時点で成り立たなくなっています。そもそも、同じ小学校は同じ中学校を実現するために、地理的に隅っこにある中学だけにするという考え方には、無理があります。

(3)老朽化については、それがイコール廃校の理由にはなりません。

3.地域コミュニティの拠点を壊さないで

東小では二年に一度、滝木間地区の運動会が開催されています。

また、東小・南小・南中を母体としてすこやかネットワークがあり、チェロとピアノのコンサートが開催された時は、地域の方々の多くの参加で、盛大に盛り上がりました。「作って遊ぼう」という行事では、子どもたちが地域の方々に、折り紙や竹飛行機、タコの作り方を教えてもらったり、一緒に木で椅子を作ったりして世代間の交流の場となっています。

そしてすこやかネット最大のイベントが、毎年1月に行われる「おおとんど」です。これは毎年多くの方が参加されるイベントとなっています。おおとんどに使用されるのは、地域の方々が自分の山で切ってきた竹です。まさに地域に根差したこの様な伝統行事が承継されているのも、地域コミュニティがあるからこそです。

南中がなくなるとどうなるでしょうか。滝木間地区や畑中の地域の方々が、畷中学まで行くのは大変です。学校がなくなることで、地域のコミュニティがなくなってしまいます。せっかく今まで地域の方々で作り上げ、大切に育まれてきたコミュニティを壊し、校区をつながりの希薄なものに作り替えるというのは、これもまさに「もったいない」としか言いようがありません。

耐震工事、クーラーや太陽光パネルの設置など、多くのお金をかけてきたことに関してはいまさら言うまでもありません。

この様に有形無形、様々な財産が統廃合の計画で失われようとしています。

4.大切なものを守るために条例を

大事にすべきは市民の声であり、大切に使うべきは現金です。また大事に守っていかなければならないのは歴史と文化で、それを地域ごとに支えてきたのがコミュニティです。このことから、解消すべき緊急課題は、校舎の老朽化、この一点に絞られるのではないでしょうか。 

そしてその方法として、長寿命化を必ず検討するよう私たちは求めているのです。

市長は、「条例制定までは必要がない」と書かれていましたが、それでは検討したと言えば検討したことになってしまいます。今回統廃合ありきで新小新築の必要性をおっしゃっていて、全く納得のいく説明を頂いていません。だからこそ、条例の制定を求めざるを得ないのです。

また、最後になりましたが、市が何よりも守らなくてはならないのが市民の命です。熊本の大地震により、学校の避難所としての役割がクローズアップされています。校区が広がれば、遠くてたどり着けない人が出てしまわないか、校区あたりの人口が一万一五〇〇人と大阪府下で並はずれて大きいために、スペースが足りないなんてことはないのか。心配でならないことも付け加えさせていただきます。

 

(横溝幸徳)

1.この条例の趣旨と内容及び長寿命化を条例で義務付ける必要性について説明したいと思います。

市では、今後十年間に西部地区のすべての学校が築後四七年を超え、学校更新需要が集中します。これに対して、国は公共建築物の長寿命化を図り、財政負担を減らすことを提起しています。ところが、市長は学校統廃合で学校を減らすとともに売却可能資産を増やすことで財政負担の軽減を追求し、議会もこれに追随しています。

 そこで、私たちは、文化的生活水準を下げずに、財政負担を減らす方策を追求するのが、市長及び議会の財産管理者としての責務であると考え、この条例の制定を求めています。

条例の主たる内容は、第一に、築後六〇年未満の鉄筋コンクリートの公共建築物の更新は長寿命化改修を原則としています。これにより財政負担は下がります。第二に、公共建築物について長寿命化計画の策定を義務付けています。これにより、更新費は長期的に平準化されます。第三に、改築・移設・統廃合を含む計画は、策定済みのものであっても長寿命化改修の代替案を検討した上で、評価審査会の意見を付して議会の同意を求めることを義務付けています。これによって、議会は十分な資料の下で、長寿命化しない正当理由があるか否かを審査できます。第四に長寿命化改修の設計には、代替案として検討する場合を含めて市民参加を保障しています。

2.インフラ長寿命化基本計画の主意

私たちの生活は交通施設・上下水道設備・防災設備や学校・保育所などのインフラの蓄積の上に成り立っています。人口の減少に合わせてインフラを減らせば、現在の文化的水準は維持できないでしょう。

しかし、これらインフラを維持しようとしても、税収に比して更新費の負担が高かったり、更新時期が集中したりすれば、公共料金の引き上げや給付の引き下げをしないと財政の維持が難しくなります。

そこで、インフラの更新サイクルを諸外国並みに長くして建築費の負担を減らし、計画的に更新時期をずらして更新事業の集中による物価の上昇や公債費負担の増加を防ぐというのがインフラ長寿命化基本計画の主意です。 

建築物の保守体制を整備するため、その費用を地方交付税の単位費用に算入したのも、更新サイクルを長くする体制作りを求めるものです。転用も公共建築物を維持しつつ新しい需要に応える点で長寿命化と同じ発想といえます。

3.長寿命化の主意に反する集約・集合の乱用

集約・集合は、人口減少に対して、施設を減らすものなので、文化的生活水準を低下させたり、つぶした施設の利用者を他の施設に分散することで長寿命化では発生しない投資を招いたりします。このような場合は、「賢く使う」という長寿命化理念と相入れません。

例えば、子どもの数が減ったからと学校を集約・集合の対象にすれば、コミュニティの子育て機能は著しく損なわれます。そこで文科省は、長寿命化改修の自治体負担を二六・七%に抑えるとしています。そして、「学校施設の長寿命化計画策定に係る手引」で、少子化に対して「現在の学級数や児童生徒数の下で,保護者や地域住民と共通理解を図りながら,地域の実情に合わせて,学校の統合を検討するか,小規模であることの良さを活かしデメリットを抑えつつ小規模校を存続するか等について検討することが期待される」として、統廃合か長寿命化かの判断を地方にゆだねています。しかし、市は、市民の意見は取り上げないとして統廃合を決め、地域社会の文化的生活水準の維持を犠牲にしています。

また、市の教育環境整備計画は、小規模校の南小・東小を統合するだけでなく、畷小や一六三号線以南で唯一の南中まで廃校にして、売却可能財産を得ることも目的としています。このため新小建設の他、長寿命化では発生しない統廃合校以外の校区への生徒の移籍による建築需要を発生させています。改築が予定されている忍小・西中の大改造、余裕教室がなくなるために必要となった連携棟の新設、廃止した学校の廃棄物処理費用の発生などです。このため、学校を九校から六校に減らした割には財政負担が減っていません。

市は、新小学校を作る理由として、発表・交流スペースを作りたい、土砂災害対策のために東小を廃止する必要があるとも述べていますが、発表・交流スペースは、長寿命化をすれば、余裕スペースを活用して全校で確保できます。また、土砂災害対策は地域全体の問題であり、必要なのはこれを解決するための財源確保です。

4.市長見解・・これまで同様、長寿命化も一つの方法に掲げて検討する?

市長が、長寿命化も一つの方法と考えて検討したというのであれば、なぜ、市は教育環境整備計画で、改築と統廃合のみを比較し、長寿命化と統廃合を比較しなかったのでしょうか。 

長寿命化の理念は、無駄な投資をしないで公共財産をできるだけ保全活用することを基本としています。そしてこれは、子どもの人口が減ればその余裕を教育の充実に生かす、人と地域の歴史の蓄積を大切にする、大量の廃棄物の発生を防止する、といった理念に支えられています。

一方まちづくり長期計画は、スクラップアンドビルトを基本としています。これは、子どもの人口が減れば学校を廃止し、売却可能資産に変えるとの考えで、もともと長寿命化の思想とは両立しないのです。

従って、市長が、まちづくり長期計画を見直さないが長寿命化を検討するというのは、欺瞞と言わざるを得ません。

5.市長見解・・長寿命化を義務付けるなと市民に要求

市の標準財政規模は百億円、公共事業関連の公債費は長期的に見れば、金額にして十億円程度で、その半分五億円程度が学校関係です。

教育環境整備計画による二〇年間の市の負担は百八〇億円、二〇年償還の返済額は年九億円となるので、公債費は年四億円増加して経常収支比率は百を超え、歳出削減や公共料金引き上げを迫られます。

これに対し、直ちに長寿命化に取り組めば、経常収支を悪化させることなく、地域の学校を残すと共に、余裕教室の活用などで教育環境を向上させることができます。 

これは、人口減少、税収減、市民サービスの低下、人口減少という悪循環を防ぐ要因としても機能するでしょう。

私たちは、財産管理者である市長と教育長が、公有財産と税金を「賢く使う」長寿命化に取り組まず、また、議会がチェック機関として機能しないことのつけを市民に回さないよう条例制定を求めているのです。

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