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公共施設はお荷物ではなく、住み心地良さを支える資源

1.自治体が策定を求められている施設再編計画とは何か

 2020年代になると、1970年代を中心に整備された公共施設が一斉に築50年近くとなり、更新が集中する時期に入ります。また、日本の人口は2008年をピークに少子高齢化を伴いつつ減少に向かうことが予想されます。

 そこで、国は2013年11月に「インフラ長寿命化基本計画」を取りまとめ、国、自治体レベルで行動計画を策定することとしました。これにより、各自治体は、人口ビジョンと併せて公共施設等総合管理計画、これを実施する個別計画を策定することとなりました。

 この策定に当たり各自治体が求められたのは、

 ①公共施設の長寿命化を図ることで更新に要する年平均負担を減らす、具体的には、従来47年であった耐用年数を変更し60年で改築す

  ることを原則とし、40年前後で長寿命化改修ができるものについては躯体の耐用年数80年で改築する、

 ②改築・改修時期を分散させて負担が特定の時期に集中しないようにする、

 ③少子高齢化という時代の変化を見通して無駄な更新とならない計画とする、

ということです。

 このうち、①②は技術的なものですが、③には、各自治体における公共施設の多少や財政状況に加え、住み心地の良さへの公共施設の寄与に対する各市の評価が反映しています。

2.府内17市が決定した公共施設の床面積削減目標とその考え方

 

(1)1人当たり公共施設床面積と目標の関係

 人口減少に伴う公共施設削減の数値目標を定めているのは、2020年3月現在府内17市で、削減目標と延床面積/人は表1のとおりです。

 採用している削減目標の根拠には、大きく分けて、1人当たり公共施設床面積を基準とするという考え方①と、公共施設更新事業への支出可能額を決めて、これに合うように床面積を削減するという考え方④~⑥があります。

 

 図1のとおり、地方交付税措置によって市町村間で1人当たり経常一般財源に大きな違いはないので、1人当たり床面積が同じなら、公共施設更新費に対する財政負担もほぼ同じとなるし、1人当たり経常一般財源に大きな変化がない限り、将来も経常一般財源に占める公債費の割合を現状と同程度に保てるので、1人当たり公共施設床面積は、計画の目標とするのに適しているといえます。

 1人当たり床面積維持を目標としているのは9市で、多くはその前提となる人口を表2①のとおり、市の政策を踏まえた人口ビジョンの予測値としているので、社人研人口推計を基準にすると表1のとおり1人当たり床面積が増加する目標となっています。

 

 これに対して、投資的経費の支出可能額を定めている④~⑥の7市は、表2の④~⑥のとおり、負債減少額/年や、扶助費増加/年を見込んでいる市があるものの、基本的には公共施設の更新が少なかった過去5~10年の建設事業費の平均を基礎にしています。 

従って、この考え方は、公共施設更新事業への支出が、公共施設の更新が少なかった過去5~10年より増えないよう、更新施設を減らすことを最優先するというものです。

 実際、これを採用している市では、社人研人口推計を基礎にすると、表1のとおり1人当たり床面積が減少する目標となっています。この7市の内、大阪市を除く府内32市の1人当たり平均床面積25.2㎡を上回っているのは、泉佐野市・和泉市・豊中市・岸和田市・泉南市の5市で、四條畷市は0.42㎡/人、守口市は0.05㎡/人これを下回っています。

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注1:泉佐野市は、長寿命化を前提とする経費を公共施設とインフラを合わせて25%削減するとしているが、公共施設縮減率は不明である。インフラの縮減

  は困難であることから、ここでは、インフラ15%、公共施設40%と仮定した。

注2:社人研人口は、平成27年度の推計によっている。市の公共施設管理計画の多くは、社人研推計として平成22年推計を用いているので、この調査数字と

  若干異なる。

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(2)各市の目標値と財政状況の関係

 表3によれば、投資的経費の支出可能額を定めている7市の内、面積40%削減を目標としているのは、泉佐野市、四條畷市、守口市、泉南市の4市です。

 このうち泉佐野市、守口市と泉南市の3市では、経常収支比率が100を上回り、将来負担比率も30を超えており、財政面から公共施設の負担を減らすことを迫られているといえます。

 しかし、経常収支比率が100を超え、将来負担比率が30を超えていても、岸和田市は表2④のとおり負債減の余力があることを理由に床面積削減を30%に押さえ、藤井寺市、松原市、門真市は、財政事情よりも1人当たり床面積維持を重視して表2の①を採用、目標を設定しています。

 これは、かなりの自治体が、公共施設を街の住み心地の良さを支える重要な要素ととらえ、財政事情が悪化しても公共施設の1人当たり床面積削減を安易に削減できないとの認識を持っていることを示しています。

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3.根拠不明の公共施設床面積削減目標を打ち出した四條畷市

 図2のとおり、四条畷市の公共施設2.1㎡/人は、大阪市を除く府内32市中少ない方から4番目、特例市・中核市・指定都市以外の21市中では2番目です。

 にもかかわらず、東市長は、2050年まで年平均公共施設建設費を、公共施設整備事業がほとんどなかった過去10年の平均7億円に抑えるため床面積40%削減などを行うことを決定しました。

 これは、今後40年にすべての公共施設を更新する場合の年平均更新費14.6億円を長寿命化で12億円にしたうえで、施設面積の40%削減等で7億円に抑えるというもので、費用面で(14.6-7)/14.6=52%、面積で(12-7)/12=40%削減するものです。

 この削減目標は、社人研による2015年から2045年までの30年間の人口減少推計29%より大きいため、1人当たり面積は現在の84.9%、1.78㎡/人となり、現在府内17市中少ない方から3番目の1人当たり床面積が、さらに低下、図3の通り府内最小となる見込みです。

 しかし、表4に見るように、四條畷市の財政は、経常収支比率が95.1、将来負担比率ゼロと健全で、40%以上の削減を目標としている他の3市のように、経常収支比率が100を超えている(表3)わけではありません。

 また、表5のとおり、過去10年の公共施設建設費年平均7億円の下で、年平均4.8億円を借金減少に充て、直近の5年では、これに加えて年平均3.9億円を基金積み立てに回しています。つまり、平均7億円の建設事業であれば毎年8.7億円を貯蓄できる財政力を持っています。

 つまり、四條畷市の場合、他市のように、1人当たり平均床面積が府内平均より多いとか、経常収支比率が100を超えているとか、泉南市のように社人研推計で40%近い人口減少が見込まれているなど、公共施設の床面積40%削減の必要を説明できる根拠が全く見当たらないといえます。

 従って、東市政は、30年後の人口の減少を政策によって11%に抑制するとの人口ビジョンを達成するのに、公共施設は役立たないとの見解に立っているといえます。

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注1:泉佐野市40⑤は、市名・公共施設管理計画期間・面積削減目標の根拠を示している。

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4.公共施設はなぜ必要か

 市民の各公共施設との関りは濃淡様々ですし、1人当たり床面積は、市民が公共施設というサービスにどれほどの比重を置いているかを相対比較するための指標に過ぎず、各施設の必要性を測れるものでもありません。

 しかし、憲法という社会契約に国民が従えば、個人の幸福追求権の保障を実現するために、誰もが利用できるものとして住民の共同で維持する施設を、街の公共施設として整備することが必要になります。

 そして、具体的に、ある公共施設が必要性を満たしているか、どうすればより適切に必要性を満たせるのかについては、これを必要としている人の声を聴き、その声を生かした事例を調査することで、結論を導くべきことになります。

 

(1)公共施設に対する利用率という評価基準をどう考えるか

 私は、次のように考えるべきではないかと考えます。

  • 公共施設は効率性より必要性が優先する

  民間施設は採算性が認められること、つまり、お金を出しても利用する人がいることでなりたちます。従って、その存続には利用

 率が最も重要な判断基準になります

  一方、公共施設は、幸福を追求するために利用できる社会的基本財、ないし地域コミュニティの運営に必要な公共財として提供

 され、誰でもコミュニティの一員として富によって差別されることなく利用できるものであることで、街という公共空間の住み心

 地を左右します。

  そして、その機能が、どの街であれ、何らかの形で公的に提供されるべきものである点に、存在根拠がありますす。

  従って、必要性が、効率性に優先し、利用率が低いというだけで廃止してよいものではありません。効率性は無視できないとして

 も、そのためにまず検討されるべきは利用率を高める方策なのです。

  •  必要な機能を充足するに足る公共施設があり、その機能が十分発揮できるよう配慮することで、利用率を高め、住み心地の良い公共空間にするのが公共の役割

  配置が悪くても、建物の設備、構造、管理方法が時代の要請にそぐわず、使い勝手の悪くても利用率は低下します。

  必要なのは、公共施設に期待される機能を認識していること、必要な機能で現存施設にないものはないか、現存施設がその期待され

 る機能を十分に果たしているか、各機能を十分に発揮するために求められることは何かを、アンケートや事例調査で把握すること、そ

 の上で、規模を含めて施設の更新計画を立てることです。

(2)費用削減のための集約化と、施設機能の発揮の関係をどう考えるか。

  四条畷市の西部地区は、中心部に公共施設があれば、どこからでも歩いて行けるほどの距離になるので、市民全体が利用する施設

 については、中心部への集約化によって利便性が高まる可能性があります。

  しかし、南中と市民総合センターと市役所は、それぞれ、すべての施設を集約できるほど広くはありません。これが、市民総合セ

 ンターと市役所の統合が困難とする理由です。また、南中への市民総合センターの移設には多くの市民が反対しています。これは、

 道路事情や地形からみて、高齢者や子づれの親が利用するには不便だからで、若者にとって不便な場所とは言えません。一方、163号

 線以南、JR以東から小中学校が一遍になくなったことで、この地域の青少年の居場所が大きく損なわれており、学校に代わる代替施

 設が不可欠となっています。

  また、市の西部地区に青少年が自習などに使える公共空間や、市民が読書で過ごせる空間が極めて少ないこと、幼児を自由に遊ば

 せることができる近隣公園や、ボール遊びができる公園が少ないことも、市民共通の認識と思われます。

  こうした中、議会では、渡辺議員が、市民総合センター(730席の市民ホール・図書館・公民館)、歴史民俗資料館、教育文化セン

 ター、福祉コミュニティセンター、楠風荘、忍ケ丘子ども園、市役所、教育センター、保健センターを、市民総合センターのある場

 所に集約する案を提示しました。

  これは、集約することで、市民ホール700席・図書館機能の充実を図りつつ、共用部分の重複をなくすことで床面積を30%程度節約

 でき、工事費を10%程度節約できるというものです。

  しかし市役所、市民センター他の施設が機能するには駐車場が必要なことは明らかです。ところが渡辺議員は、多大な費用が掛か

 る地下駐車場(四條畷市の場合、㎡単価は土地の価格の倍)の設置提案をしながら、地下駐車場の床面積が増えることを除外して、

 集約化すれば、床面積を4割削減できると、主張したのです。

  もし、提案のように地下2階の駐車場を設置するのであれば、市役所用地の売却だけでは到底足りません。しかも、市役所用地を売

 ることは、私有地は売らないという市長の公約にも反します。

  結局、渡辺議員は、すべての施設を1か所に集約しても、地下駐車場がなければ機能を発揮できないため、床面積を4割削減できるわ

 けでも、年平均建設費を7億円に抑えることができるわけでもないことを証明しながら、集約化で4割削減できると主張したのです。

  その上、この主張は、南中廃止を決定しながら南中を工事中の仮移転先として活用するというだけで跡地の恒久的活用方策を示さな

 い点で無責任ですし、歴史民俗資料館、楠風荘、忍ケ丘子ども園について、パブリックコメントで出された市民の指摘に何ら応えてい

 ません。

  このような思考になるのは、施設再編の目的を、公共施設の機能をより効果的に発揮できるようにすることでなく、費用を削減する

 ことに置いているためでしょう。これでは、住み心地の良い街を作れるはずがありません。

  

  ところが、議会は、検討会の設置は住民運動の成果だとして、40%削減の根拠を明らかにするよう求めることもなく、当会の「40%

 削減の妥当性についても検討できるように」との要望を拒否し、2050年までの年平均建設費を床面積の40%削減等により7億円とする

 ことを前提に、その具体化のための検討会を設置することに賛成しました。

  

5.共に学習し、市民の声で、畷の未来を切り開こう

  そもそも、議会がなすべきは、「公共施設の床面積40%削減等で2050年までの年平均建設費を7億円とする」との市長提案の根拠を

 明らかにさせることでした。そして、そのポイントは、人口減少を抑えるとした人口ビジョンや、市長の公約との矛盾を明らかにす

 ることでした。しかし、議会はこの点の追及を行えませんでした。

  また、現存の公共施設で市民に提供すべき機能に欠けるところはないのか、今の公共施設が期待される機能を果たす上で設備・構

 造・管理方法に問題はないのか、について市に調査検討を約束させることでした。議会ではこの点について質問がなされましたが、

 当局はこれを約束しませんでした。現存施設の40%削減の具体化が検討会の任務である以上、当局が約束できないのは当然ともいえ

 ます。にもかかわらず、議会は、付帯決議を付すこともなく検討会設置に賛成したのです。

  以上からすれば、東市長や四條畷議会が目指しているのは、公共施設をリストラすることで、四條畷市を住み心地の良い街にする

 ことには、何らの関心も持っていないといわざるを得ません。

  残念ながら、市民が無関心では、次世代に引き継げない街になってしまうのが、土井市政、東市政と続く四條畷市政と市議会の現

 実と言わざるを得ません。

  払った税金が、住み心地の良い街づくりのために使われるように、市政について共に学習し、市民の声で、畷の未来を切り開こう

 ではありませんか。

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