学校規模が不適切として学校統廃合の合意が形成されやすい基準は、複式学級とならないことである

(1)学校廃止は、安全な通学の確保や地域コミュニティの維持への影響について、地域住民が受忍できるものでなければならない

 

 学校教育法施行規則第41条、第79条は、小中学校とも学校規模の標準を12学級から18学級を標準とすると定めている。

 

 そして、この標準を維持することのメリットとして競争や集団競技に適していることが指摘されるが、小規模校(標準規模以下の小中学校を言う)のメリットとして一人一人に目が行き届き自己肯定感を育てるのに適しているとの指摘も有力である。

 ことにWHOは、世界中の専門家は「大規模な機関においては回避することができない規則および規制を回避するためには、教育機関は小さくなくてはならない・・カーティス報告が提案した100人を上回らない規模・・という点で意見が一致している」と指摘している。

 このように、学校にはある程度の規模が必要であるとしても、教育学的見地から標準規模(35人学級で12学級なら390人以上)の維持が望ましいとされているわけではない。

 

 むしろ、学校規模の確保を巡る議論は、子供たちが受ける教育の質を確保するためにどうあるべきかという教育の受益者のための議論であるから、これが受益者の声を無視する根拠とされること自体、本末転倒と言わねばならない。

 従って、一定の規模の学校を維持するという目的は、当然に通学路や地域コミュニティの維持に勝る公共性を有し、その変更を受忍すべきだとはいえない。

 むしろ逆であって、学校は、地域住民の教育を受ける権利の保障、具体的には子供たちの安全な通学の確保や地域コミュニティの維持を保障するために設置されるべきものであり、学校規模の確保を目的とする学校廃止は、子供たちの安全な通学の確保や地域コミュニティの維持への影響について、地域住民が受忍し得るものであることを大前提として追及されるべきものである。

 

 それゆえ、文科省は「公立小学校・中学校の適正規模・適正配置等に関する手引」において「学校規模を重視するあまり無理な学校統廃合も見られたことから、平成48年に地域住民の理解と協力を得て行うよう努めることや、小規模校の利点を踏まえ、総合的に判断した場合存知することが望ましい場合もあることなどを通達しています」としているのである。

 

(2)学校統廃合の必要性が受け入れられている学校規模の実態

 

 平成29年学校基本統計によって、都道府県平均の小中学校1校当たりのクラス数を比較したのが図1と図2である。 

 小学校について見ると、図1のとおり、全国では、3~5学級は10~12学級とほぼ同様の学校数で、学級ごとの学校数はそれぞれ全校の3%前後を構成している。一方、最も多いのは7学級8学級の学校、次いで多いのは14学級で、それぞれ全校の8.9%、10.6%、6.9%を占める。

 これに対して大都市圏(埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、京都、大阪、兵庫、福岡)では、5学級を下回る学校の構成比はそれぞれ全校の0.6%を下回る。一方、最も多いのは14学級15学級の学校、次いで多いのは7学級8学級で、それぞれ全校の8.3%、6.1%、5.2%、6.9%を占める。

 これは、小学校については、規模が5学級を下回るようになると、大都市圏では存続の必要性が認められるのはまれであるが、大都市圏以外では、地域の存続ないし通学保障のために必要性が認められる場合もかなりあることを示している。

 一方、7学級・8学級と14学級・15学級が、全国でも大都市圏でも構成比が最も高い。このことから、少子化が進んで7学級・8学級になると統廃合の必要性について合意を得やすくなり14学級・15学級の学校の構成比が高くなること、大都市圏ではこの傾向が明確に表れることを示している。これは、大都市圏では、学校統廃合に対する地域の存続ないし通学保障上の必要といった制約が弱いために、学校規模の適切性が主要な判断要素となっていることを窺わせる。

 

 中学校について見ると、図2のとおり、全国平均では3~15学級の学校はいずれも全学校数の4.5%を上回っている。

 これに対して大都市圏では7学級以下の学校はいずれも3.5%を下回っている。そして、11学級・12学級の学校はいずれも全学校数の7.4%・7.2%を構成している。

 これは、中学校は、大都市圏では7学級以下だと統廃合の必要性について合意を得やすいが、大都市圏以外では、地域の存続ないし通学の保障のために中学校存続の必要性が認められる場合が多いことを示している。

 

 以上から、地域の存続ないし通学の保障を阻害するような小中学校の統廃合は認められないが、大都市圏では小中学校の統廃合が地域の存続ないし通学の保障を阻害するという要因は地方ほど強くなく、小学校では5学級以下、中学校では7学級以下となる場合に、住民にとって学校規模が学校統廃合に賛成する動機となりやすいことを示唆している。

 そしてこれは、子供たちが受ける教育の質を確保するためにどうあるべきかということについて、教育の受益者の判断を示すものといえる。

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