砂防堰堤があっても土砂災害警戒区域に指定された訳
市は、南中グラウンドの半分まで権現川本川の土砂災害警戒区域に指定されており、その西側しか要保護施設に使えないとの見解に基づいて、小学校は設置できても南中学校を維持できないとする一方で、南中するの西側に避難場所を設置するとの方針を示しました。
しかし、権現川本川には、浸食可能土砂量の3倍を受け止める能力がある砂防堰堤が設置されています。そして、ガイドラインでは、砂防堰堤を設置すれば学校を含む要保護施設を指定区域内に設置してよいとされています。
にもかかわらず、南中を維持できないとする理由は何かが問題となります。
東市長は平成30年に、東市長が南中廃止計画の説明で、小学校なら設置できるとあえて付け加え、南中跡地に賑わいをとも主張していることは、土砂災害警戒区域であることが南中廃止の理由というわけではないと言いたかったものと思われます。
ところで、大阪府内で土砂災害警戒区域に指定されている権現川流域には、戦後まもなくして水車工場が立ち並びましたが、土石流で倒壊しました。また、その土砂は寝屋川水系に流れ込むので大東水害にも影響を及ぼしたようです。そこで、三机神社近くに寝屋川水系への土砂流入を防止するため砂防堰堤が設置され、その後、土石流による災害防止のため更生園上流部に新たに砂防堰堤が設置されています。
権現川本川は寝屋川に流れ込む1級河川で影響範囲も広いので、この砂防堰堤の適切な管理が求められます。
なお、大阪自治体問題研究所の自治体の防災対策に関するアンケートに対し、土砂災害警戒区域に指定されているが砂防堰堤があり土砂の流下量ゼロと回答した市は、四條畷市以外にも箕面市、泉佐野市等2市ありました。
山から海までの距離がある地域では、土砂ができるだけ流下しないようにしないと、天井川の形成が促進されるためと考えられます。
土砂災害防止法での砂防堰堤の位置づけ
土砂災害警戒区域は、土砂災害防止法施行令第2条第2号により、土石流によるものについて「その流水が山麓における扇状の地形の地域に流入する地点より上流の部分の勾配が急な河川のうち当該地点より下流の部分及び当該下流の部分に隣接する一定の土地の区域であって、国土交通大臣が定める方法により計測した土地の勾配が二度以上のもの(土石流が発生した場合において、地形の状況により明らかに土石流が到達しないと認められる土地の区域を除く。)」としており、地形のみで設定できますが、知事は指定に当たり市長村長の意見を聞かなければなりません。
ところで、広島で生じた土石流は砂防堰堤がなかったことによるもので、地形が土石流を発生させやすくても、砂防堰堤で土石流を防止することはできます。
そこで、砂防堰堤の効果は、避難と共に災害防止対策を構成するものとして、土砂災害防止法第3条に基づいて国土交通大臣が定める「土砂災害の防止のための対策の推進に関する基本的な指針(平成29年 8月10日国土交通省告示第752号)(以下「基本指針」という。)の三 法第七条第一項の土砂災害警戒区域及び法第九条第一項の土砂災害特別警戒区域の指定について指針となるべき事項」で、次のように規定されています。
「地震等の影響により地形的条件が変化した場合や、新たに土砂災害防止施設等が設置された場合など、土砂災害警戒区域等の見直しが必要になった場合は、柔軟かつ迅速に対応することが望ましい。特に、土砂災害防止施設等が整備され、施設機能の適切な維持管理体制が確保されるなど、土砂災害特別警戒区域の全部又は一部について指定の事由がなくなったと認められる場合には、当該特別警戒区域の全部又は一部について速やかに指定を解除することが望ましい。」
さらに、土砂災害警戒避難ガイドライン(国土交通省砂防部 平成 19 年 4 月 平成 27 年 4 月改訂)は第6章で「土砂災害に対して安全な避難場所・避難経路が確保できない地域に対して、避難場所・避難経路を保全する土砂災害対策施設を整備する。」として、イエローゾーン(土砂災害警戒区域)に土砂災害対策施設(砂防堰堤)が設置した場合、イエローゾーンのまま、その地域の避難場所を隣接するイエローゾーンの避難場所ともできることを図で示しています。